天日干し・自然乾燥 “はさがけ米” は循環型農業の象徴!

はさがけ米の郷へようこそ〜!

1. “はさがけ” って何ですか?

「稲架掛け」と書いて「はさがけ」と読みます。刈った稲を掛けて天日で自然乾燥させるための大きな梯子状の装置を「稲架(はさ)」と呼びます。また、稲架にかけて天日乾燥させることを「はさがけ」と呼び、そうして乾燥させたお米は「はさがけ米」と呼びます。

2週間から3週間かけてゆっくりと天日に干して自然乾燥させるはさがけ米は、一晩で機械乾燥させて仕上げる通常の乾燥方法と比べると乾燥時のお米への負担が少なく、また自然乾燥中に後熟が進むとも言われていて「お米が美味しくなる」と評判です。

はさがけ体験会の風景。子供とはさがけ。
はさがけを手伝う子供達
はさがけ体験の様子

2. 羽後町田代は昔ながらの循環型農業が残る地域

かつて、羽後町の稲作農家では自宅で牛を飼うことが一般的でした。牛が田起こしをしたり、農作物を運んだりしたのです。今ではトラクターや運搬機にその役目を譲りましたが、羽後町の山間部では今でも何頭かの牛を飼いながら、稲作を続ける農家さんが残っています。

羽後町田代天神堂地区。牛を飼う稲作農家
牛を飼う稲作農家
@羽後町田代天神道

化学肥料が登場する前は、牛を飼うことと稲を育てて米を収穫することは切っても切れない関係でした。牛の糞尿は堆肥となって田んぼを豊かにし、お米がとれた後に残った稲ワラは、牛舎の敷きワラとなり牛のエサとなったのです。

現在では牛糞堆肥が無くても化学肥料によって稲作は成立しますが、牛を飼う農家では餌などになるワラが必要です。ワラを残すには “はさがけ” が一番の方法で、畜産と稲作の兼業農家が多い羽後町田代地区では今でも “はさがけ” の風景が残っているのです。

羽後町田代天神道地区にて。稲作農家で飼われている牛
こちらの農家では、10頭近くの牛が買われている

3.  “はさがけ” が見られるのは年間たったの3週間

稲架が梯子状に組まれるのは、稲刈りが始まる1週間前の9月15日頃。それまでは、独立した掘立柱の状態で田んぼ脇の畦で出番を待っています。

冬、出番を待つ稲架(はさ)
3月。雪の中、出番を待つ稲架

9月中旬。細い丸太が梯子状に組まれます。

羽後町田代地区。ようやく稲架結いも終盤に。
稲架結いもようやく終盤に
晴れた日の作業

9月末、稲刈りと同時に稲架に掛けられます。

はさがけの風景2_羽後町田代門前地区にて
稲を干すのは全て手作業
手伝ってもらいながら作業は進みます
はさがけと穂ニオの風景
巨大な稲の壁が出現
手前は作りかけの穂ニオ

天日乾燥の期間は約3週間。お米の水分量を計りながら稲を下ろす日を決定します。10月中旬、下ろした稲はその場で脱穀されます。組まれた稲架は後日解体され、冬を迎えます。

はさがけ、稲入れの風景。
稲を下ろすと同時に、脱穀機にかける
役目を終えて格納された稲架木
役目を終えて片付けられた稲架木
©︎ Fujiwara.T
©︎ Komori.I

4. 循環型農業の素敵な未来

一般的なコンバインでの稲刈りは、稲架を組む必要も、稲架にかける、稲架から降ろす、脱穀する、稲架を解体する必要もなく、あっという間に終了します。牛を飼い、はさがけを行う農家さんは大変な労力をかけて、このスタイルを維持しているのです。  

羽後町にいらした際は、ぜひ田代地区まで足を伸ばして稲架が林立する風景を写真に収めてみてください。昔ながらもスタイルを頑なに守り抜く農家さんの気概を感じていただけるかもしれません。

MAP : 田代のはさ群

舞踏家、土方巽と写真家、細江英公は稲刈り時期の稲架をバックに写真を撮り、一冊の写真集を作りました。その主な舞台となったのが羽後町田代地区で、写真集の舞台となった場所が「田代のはさ群」としてGoogle mapに登録されています。

闇夜に浮かび上がる「はさがけライトアップ」

2021年の秋、「はさがけライトアップ」が誕生しました。集落の近くにある田んぼですが、街灯の灯りは稲架にかけられた稲の壁に遮られて当たりは真っ暗。そこにライトアップされたはさがけが浮かび上がります。天気が良い夜は天の川とのコラボレーションも期待できます。

©︎ Inokuma.M
©︎ Inokuma.M

MAP : 田代のはさ群(ハサ門前)

「はさがけライトアップ」の開催場所は、Google mapに「田代のはさ群(ハサ門前)」として登録されています。

5. 羽後町みやげに、“はさがけ米“ をどうぞ

 羽後町田代、上到米(かみとうまい)地区で作られた “はさがけ米“ が「道の駅うご 端縫いの郷」で購入可能です。上で紹介した「田代のはさ群」とは少し場所が違いますのでご注意ください。

羽後町の道の駅で買える「はさがけ米」
羽後町の道の駅
端縫いの郷ではさがけ米が購入可能

特集・羽後町の歩き方